HKS魚拓

ユネスコ初代事務総長「まず人口削減・少子化→優生学的人工授精を」 by 気まぐれです。

「気まぐれです。」というサイトの魚拓から転載
(https://web.archive.org/web/20131014174245/http://bilininfojp.blogspot.jp/2013/08/blog-post_27.html)

原文:http://julianhuxleyeugenics.blogspot.jp/p/huxley-and-eugenics.html




ジュリアン・ハクスリーは一生をかけて優生学、つまり人間の遺伝的構成を改善する応用科学に関する多面的な立場を発展させていった。優生学者たちは健全な個人どうしの生殖を勧め、不健全な人々の生殖をやめさせるようにすることを通じてこの目標を達成しようとした。




ハクスリーが残した最も影響力のある出版物を分析し、優生学、教育、人種についての彼の立場を詳述したものが下記である。1933年の「優生学の致命的重要性」、UNESCOの初代事務局長に就任した1946年出版のUNESCOの目標、1951年UNESCO「人種についての声明」、および1962年英国優生学協会でのガルトン記念講演だ。

これらの出版物同士には矛盾が尽きない。一つの出版物じたいの中ですら矛盾がある。しかし、優生学に関するハクスリーの総体的立場に対して、それぞれが特定の次元を加えている。そしてすべて合わせてみると、人間の生物的不平等性、教育、優生学的改革についてのハクスリーのスタンスがその経歴を通じてどのように進化していったのか、詳しくわかる。









「優生学の致命的重要性」 (1933)




不健全な者の断種と欠陥遺伝子保有者の特定

優生学の短期的な主要目標は、精神的欠陥のある個人に確実に子どもを作らせないようにすることであるべきだ、とハクスリーは主張した。

· 不健全な者の結婚の禁止

· 劣った個人を含有する機関の隔離

· 不健全な者の断種




しかしハクスリーは、優生学が短期的にどう実践されるべきかという細かい点は特に気にしていなかった。劣った人々の生殖をできるだけ速やかに止められさえすればよかった。




さらにハクスリーは、人々の意志薄弱さを抹消するプロセスは特に難しいタスクになるだろう、と嘆いた。精神的欠陥の特定の遺伝子コーディングには退行性があるので、と。そこで彼は、したがって優生学の長期的目標の一つは、その特徴が表れていなくとも、精神的欠陥遺伝子の保有者を正確に診断する手法を発見することであるべきだ、と提案した。遺伝子保有者が生殖前に特定できれば、優生学者にとってはまたしても、劣性生殖質が未来の世代に浸透するのを止めるために好きに使えるツールとなる、とハクスリーは主張した(Huxley,1933: 325)。




多様性および望ましい人間的特性の選定の重要性

同時にハクスリーは、どの特定の集団が他の集団より生殖すべきかを決定する立場にある優生学者は誰一人いないとし、人間の多様性の保全も主張した。 むしろ「世界はあらゆるたぐいので出来ている」わけで、これは進化論の事実に慣れ親しんでいる者なら誰でも理解すべきポイントだ、と主張した (Huxley, 1933:330)。ハクスリーは特定の人間集団に優劣をつけて抹消を呼びかける代わりに、むしろ個々人の特定の特性が励まされるべきだとした。 その中で彼が挙げたのは




· 肉体的健康と精神的健康

· 管理手腕の天才

· 詩心

· リーダーシップ

· 忍耐力

· 手先の器用さ

· ユーモア

· 適応力

· 美しさ




これらすべての性質を持つ個人はごくわずかなので、優生学の目標は、これらの特性の少なくとも一部を持つ者たちの生殖を励ますことであるべきだ、とハクスリーは主張したーそれ以外の望ましい特性についてはたとえ欠陥があろうとも(Huxley,1933: 331)。






”ユネスコ その目標とその哲学”(1946)


1945年に国連教育科学文化機関の初代事務総長となった後、ハクスリーは「ユネスコ その目標とその哲学」を執筆した。このマニフェストには、この新機関の大まかな目標と、それらにどう取り組んでいくべきかについてのハクスリーのスタンスの両方が描かれていた。しかしもっと伝わってくるのは、そこに反映された優生学に関する彼の視点だった。




ユネスコの目標には「世界平和と安全、国家間の協力、人間福祉」と「国連憲章で確認されている法秩序と人権と基本的自由のための、人間の尊厳・平等・相互尊重および正義の尊重という民主的諸原則の促進」が含まれる、とハクスリーはその1946年の出版物で主張した (Huxley,1946)。 




しかしハクスリーは、個々人が人間の進化における最も望ましい方向 を追求しない限り、真の人類福祉は達成されないと主張し、これらの目標に独特に優生学的なスピンを加えた。特に、ユネスコの主要目標は、教育改革に加え、人口のコントロールと「優生学的問題」の促進であるべきだとした(Toye,2010: 327)。




ユネスコの教育政策の目標


法律の下での平等な教育機会と平等な保護をすべての人々に保証すること
世界の政治的連帯の土台を作ること





ハクスリーは世界的連帯を起こすためには共通の基礎教育が必要だと主張し、教育システムが欠落した恵まれない人々の教育の改善を訴えた。

「ユネスコは、それが地理的領域だろうと、一般住民の中の恵まれないセクションだろうと、すべての後進的なセクターにおける平均以下の教育・科学・文化施設のレベルアップに特別な注意を払うべきだ。別の隠喩を使うならば、ユネスコは世界の暗いエリアに光を入れるように試みなければならない。… そのようにして、文盲と戦い共通の基礎教育を打ちたてる巨大なキャンペーンが、ユネスコのプログラムの一部とならねばならない」(Huxley,1946: 17)。




教育は継続的なプロセスであるべきで、知性は生まれつき固定されたものではなく、むしろ人間の精神には人生を通じて成長する偉大な能力がある、とハクスリーは主張した (Huxley, 1946:30)。この立場は彼の1962年のガルトン記念講演と比較すると非常に興味深い。記念講演の中では教育的手法ではなく、人工受精による人種改善を訴えている。つまりハクスリーは当初のユネスコの出版物に見受けられたような環境主義者ではなかったかもしれないことがうかがわれる。さらに、ハクスリーの教育改善の呼びかけは、同じく彼の1946年のユネスコマニフェストに詳述されていた、人間の生物学的不平等に関する強い主張とほぼ真っ向から対立していた。




平等の原則VS「生物学的不平等の現実」

ハクスリーは民主主義的な平等の原則を重んじ全ての人々への教育を促進せよとユネスコに呼びかけたにもかかわらず、人間には生物学的不平等があるため、改善された教育の恩恵は全員が等しく受けるわけではない、と断固主張していた。ハクスリーは知性の遺伝的基盤に関して他の生物学的欠陥よりトーンを落としていた。とはいえ、認知能力には確固たる生物学的基盤があるということに我々は「もっともな確信」を持てるだの主張していた。




「機会均等の原則は”素質の限界内での機会均等”と読めるように修正されなければならない。相当の割合の大衆は高等教育から利益を得る能力がないというのは、いかに同意しずらかろうとも事実である」 (Huxley,1946: 18)。




「人間はあらゆる望ましい素質に関して平等ではない。強い者と弱い者、健康な者と慢性的な病人、長生きする者と短命な者、利口な者と愚か者、知性の高い者と低い者、数学の才能がある者とそのまったく逆の者、親切な善人と残酷な利己主義者がいる」(Huxley,1946: 19)。




基本的な生物学的不平等に向き合うよう社会を構築する

生物学的な不平等を理解することが、すべての人々の社会における適切な居場所を保証するために必要だ、とハクスリーは主張していた。人々は知的能力において全員平等ではないので、大学レベルに向かない人々を訓練することは彼らの時間の無駄にもなるし、彼らの進歩に投資する他の全ての人々にとっても無駄になる、とハクスリーは主張した。




「人々に確実に正しい職業を見つけさせ、間違った職業から離れていさせるのに使える全ての研究や手段を[ユネスコは]奨励すべきである。個々の者にはその気性や才能に見合う仕事を確実に見つけさせる。と同時に、不適切な地位にいる人々や、しいてはその地位を濫用するような人々のせいで、社会に負荷がかからないようにすること」(Huxley,1946: 62)。




「現在のような大学の学位取得に向けて頑張って利益を得られる者は、大衆のごく一部に過ぎない。それが20%、40%、しいては60%だろうとも。残りの者については、そういった試みは彼ら自身の若年期の無駄となるし、大学の教師たちの時間と才能の無駄にもなる。公的な資金も無駄になる」(Huxley,1946: 62)。




人種基盤の優生学への反対

しかしハクスリーは、生物学的不平等が自動的に人種集団間の不平等を意味するとは主張しなかった。むしろ、否定的な、人種基盤の優生学への激しい反対に打って出て、その代わりに、ユネスコの目標は人間の多様性を保護することであるべきと主張した。



「したがって、人間の多様性の保全は最も重要である。”純粋さ”を手に入れることで、いわゆる人種集団や国家集団内の更なる統一性を得ようとしたり、人間という生物種に多様性を与えている人種集団のどれかを抹消しようとしたりするなどの、多様性を減少させる試みはすべて科学的に間違っているし、長期的な人間の進歩に逆行している。むしろユネスコは、その遠隔性または後進性のせいでこれまでほとんど共通財産のシェアを得てこなかった人種集団からの完全なる貢献を確保することを目標とすべきである」(Huxley,1946:19)。

人種についてのユネスコの声明(1951)
人種差別政策へのハクスリーの反対は、彼の事務総長任期中の1951年に出版された、人種についてのユネスコの声明にさらに例示されている。ユネスコはこの進歩的な声明の中で、人種集団が受け継いでいる遺伝的相違に基づくとするには証拠不十分と主張した。むしろ人種集団内の差異は、人種カテゴリー同士の差異を越えるものであり、個人的な教育機会も考慮に入れた場合、集団間の知性の相違は実のところ最小である、と(UNESCO,1951:3)。

声明はさらに、人種集団の分類はほぼ不可能なだけでなく、一つの集団が他の集団より勝っていると言えるはずはないと主張した。また、いわゆる「純粋な」人種が存在するという発想を非難し、異なる人種同士の関係に反対する論理的基盤は存在しないとした(UNESCO,1951: 4)。

ユネスコの声明は、以下の主張により、ユネスコの人種へのスタンスをまとめていた。


• 肉体的特徴が有効に使えるのは、人種集団についての人類学の区分法としてのみである。


• 人種集団に生まれついての知的能力の違いがあると信じる科学的根拠は存在しない。


• 同じ人種内の生物学的相違は、人種集団同士の生物学的相違と同じぐらい大きなものかもしれない。


• 異なる集団間の社会的・文化的相違の決定に遺伝的相違はほとんど影響していないことが歴史的証拠からうかがわれる。

•人種の混合が生物学的視点から有害な影響をもたらすという証拠は存在しない (UNESCO,1951: 5)。



ガルトン記念講演(1962)


英国優生学協会でガルトン記念講演をした1962年までに、ハクスリーは優生学へのますます複雑な立場を発展させていた。それは人間退化の問題の進化論的起源と、健全な人々が差別的・効果的な生殖を増しうる実際的な手法との両方に焦点を当てていた。 しかしどの特性を選択的に殖やすべきかであるか、かつ、退化した人々の生殖をまず何より先に止めさせるべきであるという彼の主張からして、ハクスリーの優生学への立場の中の特定の要素が彼の全経歴を通してコンスタントに維持されたことは明らかである。




人間退化への進化論的説明

ハクスリーは、黎明期の人類の社会組織化(競合する小集団)は、社会的知性、特にコミュニケーションの能力と協力する能力、手先の器用さなどの特性に沿っていたと信じていた。競合し合う集団の数が減ることにより欠陥遺伝子が後の世代まで生き残ることができるようになって集団内部の選抜の効果が失われたことを彼は嘆いた。




優生学的変革の実行手段

「我々が人間の進化と植物と動物の交配に関する知識に頼れば、人間のパフォーマンスと遺伝的能力の一般的レベルを画期的に上げられるとみて間違いない」 (Huxley,1962)。




人間の知的能力を改善させるには社会的変革が必要であるとハクスリーは主張した。この変革は教育改革、説得、効果的なリーダーシップを通じて、さらには「健康、肉体的美、手先の器用さ、長寿、運動能力、一般的な精神的能力、数学的・美学的その他の特性、リーダーシップ能力とチームワーク能力」を示す人間の差別的な生殖を勧めることを通じて実現できる、とした(Huxley,1962)。 これらの肯定的優生学と共に、ハクスリーは人間ストックの退化を防ぐ目的から否定的優生学のいくつかの手法をも擁護していた。



否定的優生学Negativeeugenics:

フルスケールの肯定的な優生学プログラムを始めるより前に、超過的な人口増加(と彼が感じたもの)をコントロールするための否定的優生学の実践が人類改善の最初のステップである、とハクスリーは主張した。

· 超過的な生殖を抑えるための税制および扶養制度の改訂

· 単純で安全な避妊手段




肯定的優生学Positiveeugenics:

1946年のユネスコの目標では教育の重要性を宣言していたハクスリーだが、人々を改善させるポテンシャルがあるのは教育だけではないと信じていたのは明らかだ。生物学的にはるかに確定的な立場を選んだハクスリーは、全体的な人口増加がひとたびコントロールされれば、健全な個人の配偶子を集めて大衆全体の健全性の改善に使えると信じていた。輝かしい個人に参加してくれる意志があれば、である。ハクスリーはとりわけ以下を呼びかけた。

· ドナー男性からの人工受精

· 哺乳類の精子を保全するための、無期限な低温凍結

· 最終的には、女性配偶子の長期的供給を確保するための、女性配偶子の冷蔵







これら全ての手法は、ハクスリーが「優生学的人工授精」と名づけたものの促進だった。そこでは、夫婦は「立派な」ドナーからの人工授精を選ぶのである (Huxley,1962)。このプロセスによって、後の世代の遺伝形質が改善されるだろう、とハクスリーは主張した。

「それらは人間の深部にある”本能”と対立するので、一般的に採用されることはまずありえないという反論がしばしばある。私はそうは思わない。もちろん最初は確実に、幅広く暴力的な反対があるだろう。避妊法や同性愛関連の法改革の時もそうだったように。しかし、反対論は本能からではなく、伝統と偏見から湧き出すもの[ということにできる]だろう」(Huxley,1962)。
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