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監視システム“エシュロン”

監視システム“エシュロン”
http://web.archive.org/web/20060213102718/http://www.idaten.to/meikyu/a055.html(魚拓)
【1】合衆国政府、合衆国国民をスパイする。

 もうプライバシーが守られることはない。エシュロン(Echelon)として知られる、巨大なスパイ組織が、あなた方の秘密の財産の記録から、上院下院の通信や外国の官僚間のケーブルに至るまで、何でも傍受できるのだ。


●強化される監視システム

 合衆国政府が外国の政府、そして外国の政府同様に、合衆国国民までもスパイしているという非難は、特に目新しいことではない。
 しかしながら、この10年、いわゆる信号情報(SIGINT)の技術が高度化し、監視の組織的な動きとその濫用の可能性を急変させた。
 冷戦の終結に伴い、世界の情報局は新しい方向づけを行った。監視ネットワークを管理することによって、「不人気な」政治グループや経済活動を、世界中どこからでも、どんなコミュニケーションでも監視することに焦点を当てることである。

 ワシントンの科学技術センターで副長官をしている、パトリック・S・プールと進歩したスパイネットワークの権威によれば、今日の非常に強力な、地球を覆う信号情報システムは、エシュロンである。
 エシュロンは、UKUSAと呼ばれる極秘合意の5ヶ国同盟によって利用される、基本的な監視システムであると、プールは言っている。国家安全保障局の指導の下、合衆国、カナダ、英国、オーストラリア、そしてニュージーランドの情報局を、合意は和解させた。

 UKUSA合意は、1943年5月17日に、BRUSA COMINT(通信情報局)と呼ばれる、合衆国と英国の間に批准された同盟に基づいている。しかしながら、1946年に残りの3ヶ国、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドが一緒になって初めて、SIGINT連邦機構が成立した。
 そして、1年後にUKUSA合意が設立され、共産主義に対して注意が向けられ、更に前ソビエト連邦に細かい注意が向けられた。
 そして、ハリー・トルーマンの下で1952年に国家安全保障局(NSA)が設立されると共に、この悪名高き合衆国情報局は同盟の中でリードを取ってきた。そして、それ以来ずっと断固として主導権を手放してはいない。

 その後、第三者として他のメンバーの参加が報告された。それは、ドイツ、日本、ノルウェー、韓国、トルコである。
 しかし、ワシントンを基地とするアメリカ科学者連盟のサイバーストラテジー計画の長官のジョン・パイクによれば、科学者たちは単に特定の情報同盟に含まれているだけで、システムに直接アクセスするわけではない。

●スパイがリークする

 この10年間に、多くの情報の漏れの暴露が、この途方もないシステムを強め、世界中に大いに暴露が行われ、限られていた大衆の視野に入るところとなった。

 『ロンドン・オブザーバー』は、1992年6月18日に、6人の英国のスパイから、英国には巨大な基地が存在し、多くの重要なNSAのスタッフに住居を提供しているという、内密の情報を受け取った。
 その情報員たちは『オブザーバー』に、「我々はもはや、我々が著しい不正行為と我々が活動する施設の中での怠慢に関わっていることを黙っていることはできないと感じている」と語った。

 スパイたちは英国にある最大級の基地、メンウィズ・ヒルについて話した。
 監視設備は、いかに英国では電話線にタップを設けて盗聴し、衛星に集束させ、一年365日24時間世界中の交信を聞いているかを、彼らは暴露した。

 彼らの申し立てを証明するために、情報員たちは傍受されたアムネスティ・インターナショナルやクリスチャン・エイドなどの組織からのメッセージを提出した。
 後に『季刊・秘密諜報活動(Covert Action Quarterly)』1996-97年冬号に、ニッキー・ハガーが、ニュージーランド情報局、政府交信安全局(GCSB)を暴いた。そこで内部筋がエシュロンの掛かり合いのかなり詳しい情報を詳述した。

 合衆国のいくつかの新聞社も内報と、似た情報に関するスパイからの文書のいくつかのケースを受け取った。
 合衆国での別々の例では、ある上院議員と下院議員が主流の新聞に、彼らの会話とNSAによってリークされた、傍受された外電のことを知って、懸念を表した。

 前メアリーランド州下院議員、マイケル・D・バーンズ(民主党)は『ボルチモア・サン』に、彼のニカラグア官僚との会話がいかにNSAによって記録され、報道に漏らされたかを詳しく語った。
 『クリーブランド・プレーン・ディーラー』は、ストローム・サーモンド上院議員(共和党、サウスカロライナ州)が、1988年英国のメンウィズ基地でNSAの役人に記録を残されたと報道した。ある情報員は『プレーン・ディーラー』に、その上院議員と他の政府官吏との会話をタイムリーに傍受していたと語った。
 NSAの情報筋はある記者に、「我々は上院議員たち、下院議員たち、政府機関、果ては主婦たちの不倫の会話まで聞いているのだ」と語った。

 人がプライバシーを守り、スパイ・ネットワークのようなものから逃れる術はほとんどないと、特にすこぶる性能の良いエシュロンからは、と官吏たちも認めている。

●エシュロン

 エシュロンは、「盗聴と受信」局の連合体ネットワークで成り立っていて、戦略的に世界中に配置されている。これらの基地では、一般国民、商業取り引きなどを、外国の政府間の通信と同様に傍受するのを受け持っている。

 合衆国には施設が二つある。
 一つはワシントン州ヤキマにあり、コード・ネームが「カウボーイ」と付けられているもので、極東からと同様に、北半球の太平洋からの伝送を受け取るものである。
 二つ目は、ウエストヴァージニア州、シュガー・グローブのNSAの施設内にあり、南北両アメリカの通信を傍受している。他の基地は、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、ドイツ、日本などにある。

 電話に直接タップを設けて盗聴したり、無線送信を傍受したりできる代わりに、エシュロンの施設は、レーダーを、文字どおり電信や、携帯電話や無線送信を虚空から吸収する衛星群に向けて焦点を合わせる。
 多くのレーダーは、「レドーム(レーダーアンテナ用のドーム状保護覆い)」として知られる構造に組み込まれている。そしてそれは、パラボラアンテナを過酷な天候から守り、また一般国民や、特に騒がしいレポーターや活動家たちをレーダーが向かっている方向を見られないようにする。

 最近、衛星の大規模な増加に伴って、エシュロンが世界中のあらゆる通信を傍受するのがたやすくなってきている。合衆国スペースコマンドによれば、現在では2548の衛星が地球を回る軌道に乗っているということだ。
 国防省を含む政府機関と個人契約者たちは、現存するシステムの開発や更新に、年間何億ドルも費やしている。

 衛星経由で通信を傍受する基本的な「地上にデータ送信する」2ヶ所の基地は、英国のメンウィズ・ヒル施設とオーストラリアのパイン・ギャップにある。これらの基地はNSAの厳しい指揮下にあり、雇用者と共に合衆国に直接報告される。

 プールによれば、この監視システムの最も重要なところは、レーダーが自動的に目標に向かって動く一群の衛星ではなく、空いっぱいにある多くの衛星でさえも政府にとってたやすくスパイできるのは確かだ、ということだ。
 このスパイ・ネットワークのカギになる要素は、「ディクショナリーズ」という、大規模なコンピューター・システムである。

 このスーパーコンピューターは、システムに組み込まれている、ある基準に基づいたメッセージを分類したり、信号で停止させる能力がある。その進んだ技術は、システムの、多大な情報を「解読し、濾過し、調べて分類する」能力にある。

 パイクは次のように語った。
「コンピューターには適所に音声認識システムがあり、データベースから個々の音声パターンを特定化できるので、ある特定の個人を狙うことができる」と。
 この最後の事柄は、しかしながら、ハガーのニュージーランド・リークでは立証することはできなかった。

 エシュロン・ディクショナリーズは、週7日、1日24時間、盗んで情報局に届けるべき重大な情報を探して動いている。メッセージはそれから分類され、情報源や話題は4デジットのコードに表される。
 ハガーの消息筋は数字コードの例を提供した。例えば、3848はナイジェリアからの政治通信で、8182は暗号情報、などである。
 NSAの訓練された情勢分析解説者は、すべての施設にいて、日々の傍受を検討し、合衆国NSAの上官に向けて、最も重要な危険信号の送信を送る。

 ヨーロッパでは抗議が起こってきている。ヨーロッパ官僚は、“合衆国の代わりに”自分たちの情報局がスパイすることに対して、特に批判的である。

 合衆国情報局によってスパイすることが可能なアメリカの遠距離通信の会社とは違って、ヨーロッパの衛星会社は、UKUSAの無差別監視に対して、全く違った反応を提示している。
 フランスの防衛と航空宇宙遠距離通信会社グループを担当している弁護士は、次のように述べている。
「英国は、ヨーロッパ連合の一員として、冷戦終結以来、合衆国の代わりになり、ヨーロッパの隣人たちをスパイすることに関連するプログラムに参加して、何をしているのか?」
 イタリアでは、情報と安全保障に関する国会内の委員会の上長が、ロマーノ・プローディ首相に、メンウィズ・ヒルの活動について説明を求めている。

 しかし、増えつつある批判にもかかわらず、NSAと国防総省(DoD)はいまだにエシュロンの存在を認めようとはしない。“国家安全”のために、計り知れない壁の陰に隠れて、エシュロンのことを言うことさえはばかられると、説明されているように。

 最近のDoDの短い報告で、記者が、DoDのスポークスマンのマイク・ダブルデイ大尉に、エシュロンに関するヨーロッパの議会での報告について質問した。
 スポークスマンはそっけなく応えた。
「残念ですが、私はそれについては全く関連がありません。」
 記者「ありがとうございました。」


【2】NSAはステーションF83から聞く

 ステーションF83というイギリスの巨大な“コミュニケーションズ”コンプレックスは、NSAのエージェントとアメリカ軍に占領された実にとてつもない監視施設だ。


●ステーションF83

 エシュロンとは、巨大な信号情報(SIGINT)監視システムである。エシュロンは、考えられるありとあらゆる形態の国内及び世界的なコミュニケーションを盗聴する技術を持っている。
 エシュロンの最大の施設の一つは、それは最も公的な施設の一つでもあるが、ハロゲートの町の近くのイギリスのメンウィズヒルの英国軍基地にあり、ステーションF83と呼ばれている。

 アメリカ科学者連合(FAS)のディレクターのジョン・パイクによると、施設のカバーストーリーは、メンウィズヒルは“コミュニケーションのリレーセンターだ”ということだ。
 とても面白いことに、この基地は1991年に湾岸戦争で果たした役割に対して、国家安全保障局(NSA)の“ステーション・オブ・ザ・イヤー”が与えられたのだ。
 基地の批評家たちは、1948年に秘密の同盟に関わり、メンウィズヒルから提供される情報に通じていた国々は、「イラクに対するアメリカの軍事行動を支援すべく待機していた国々と同じだった」と指摘した。

 この施設の歴史は確かに複雑で、アメリカとイギリス間の秘密契約と同盟によって始まった。

 メンウィズの施設は英国国防省の所有であるが、UKUSAという同盟から始まり、アメリカとイギリスの情報部を団結させていた。
 1951年12月11日付けのこれらの二つの政府間協定には、アメリカは“この契約が打ち切られるか修正されるまで、例外のない限り、占拠し続ける”と記述されている。
 1956年現在、そのステーションは米国陸軍安全保障局が管理していたが、1959年になるまで実際には使われていなかった。
 その後まもなく、1966年にNSAに引き渡され、陸軍第713MIグループが日常の管理を行った。


●拡大し続ける基地

 この施設で集められた情報の多くは、イギリスの政治活動家から来ている。
 彼らはアメリカ軍とNSAの役人がイギリスの土地を占領していることと、とりわけヨーロッパ人を詮索していることに怒っている。

 最近になるまでその土地は“正式に”イギリスのものだったので、イギリス国民は“塀を飛び越え”オペレーションズ・ビルの中に侵入しファイルを盗むことができた。見つかってもほんの不法侵入罪で済んだ。
 ところが、最近塀の上にレーザーワイヤーが張られたことと、イギリスの裁判所で変更があり、不法侵入者はずっと厳しい刑罰を受けることになった。
 一例を挙げると、最近イギリス役人は、トレイシー・ハートという一人の活動家を300回以上も基地に侵入したかどで投獄した。

 イギリスに拠点を持つ組織である“米軍基地責任追求キャンペーン”は、アンニ・インディゴとリンディス・インディゴ夫妻が率いており、拡大し続ける基地を絶えず徹夜で見張りをした。

 インディゴ夫妻のような活動家を通して、その基地が1974年以前に、専用搬送波通信として知られる政府間および民間の商用通信を傍受するためのものだったとわかった。
 これは、東と西ヨーロッパの電信電話省にリンクすることによってなされた。
 1974年に、八つの大きな衛星アンテナが完成し、メンウィズヒルは最初の衛星通信を傍受し始めた。

 施設は560エーカー以上もの広さがあるとインディゴ夫妻は言っている。
 現在、二つの大きなオペレーションズ・ビルとアンテナと多数のレーダーアンテナがある。そのほとんどはレドームの中に格納されている。
 レドームは球形ドームのような構造で、レーダーを覆っており、風雨から保護し、アングルを遮断している。その基地にはいくつかの大きな発電機があり、その建物専用の電力源となっている。

 傍受した衛星通信のすべてがダウンロードされている基地のメイン・セクションは、“ランウェイ(滑走路)”と呼ばれている。
 施設のこの部分は20のレドームから成り、南の端を横切り東から西に渡って伸びており、通信を傍受するハイテクな衛星にリンクする。補足だが,これは最近“ラトリー(Rutley)”という別のシステムにアップデートされたかもしれない。

 ドイツ政府の逆スパイ活動の元トップのジョゼフ・タルコフスキーは、『サンデー・タイムズ』に対し、メンウィズには「エンジニア、物理学者、数学者、言語学者、コンピューター・サイエンティストを含め1400人以上のアメリカ人スタッフと、英国国防省からの370人のスタッフがいる。一見静かなステーションF83には、全体でイギリスの国内シークレット・サービスと同じくらい多くのスタッフがいる」と述べた。
 報道によると、基地はシステムに分類されており、各々がきわめて重要な諜報機能を果たしてるということだ。

 パイクによると、シルクワース・システムは1979年に全ヨーロッパとアジア地域のマイクロウェーブ・ラジオ通信をターゲットに衛星放送を傍受し始めた。
 このシステムを使って、「メンウィズヒルのオペレーターは、例えばヨルダンとウクライナ以内の会社と個人の間のメッセージや会話をモニターできる。同様のルートで伝達されるインターナショナルなメッセージや会話も傍受できる」。それはロッキード社によって建設された。

 ムーンペニー・システムは、通信衛星から地上に放送される他のすべての電波を傍受するレーダーアンテナとアンテナから成り立っている。
 「それは、ロシアやイスラエルのような一国によって打ち上げられた衛星や、ARABSAT(衛星テクノロジーに関する中東諸国グループ)のように、グループやインターナショナル・コミュニティー全体によって打ち上げられた衛星を含むだろう」と、パイクは述べた。

 アメリカとイギリスは、そのサイトの開発と技術の改良に莫大なお金を投じてきた。
 「1984年、イギリスとアメリカ政府は、“スティープルブッシュ(Steeplebush)”というコードネームのプロジェクトに1億6000万ドル以上使った。オペレーションズ・ビルや、新しい発電機、特別モニター設備の拡張を行い、既存の衛星監視システムをアップグレードしたのだ」と、パイクは語った。

 90年代初期には、“スティープルブッシュII”というコードネームのプロジェクトで、“ランウェイ衛星からの情報を処理するために、地下に放射線強化防御設備を施した施設を設置した。”
 このシステムは、ヴォルテクスやマグナムという、さらに新しく技術的にも進んだSIGINTの静止衛星からの情報をダウンロードするためのものと思われる。

 タルコフスキーによると、建設は第三局面にあり、基地の拡張と衛星アンテナを増設しているとのことだ。
 「1998年10月17日現在、新しい赤外線カメラが備え付けられ、新しいレドームも建設中で、さらに多くの衛星アンテナが設置されることが予想される」と、インディゴ夫妻は述べた。
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