苦痛とは自然に起こるものであり、身体に異常があることに気づかせるための正常な働きである。とはいえ、体力と精神力でしばらくのあいだ苦痛を寄せつけなくすることはできる。それには、苦痛そのものに精神を集中させることだ。どこがもっとも痛むのかを分析して、その耐えがたさを評価する。そうすることで痛みを耐えられるものに変えることができるのである。これに対して苦痛と闘おうとしないと生きのびようとする意識が弱められてまう。苦痛の中できっと大丈夫だという楽観的な考えをもって頭を働かせるには、特別な思考努力と意思の力が求められる。だが身体が限界まで苦痛を受け続けると自動的にスイッチが「オフ」になり、意識を失う。
バリー・デイヴィス(著) 伊藤 綺訳 『実戦スパイ技術ハンドブック』原書房 2007/9/11 p.316 弟8章 敵対的環境下での活動に向けた訓練 拷問 ISBN-10:4562040971 ISBN-13: 978-4562040971)