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ネタニヤフの支援ネットワークとは

ネタニヤフの支援ネットワークとは
http://web.archive.org/web/20060213102004/http://www.idaten.to/meikyu/a012.html(魚拓)
●スカイフェ資金がイスラエルのシンクタンクに流れている

 リチャード・メロン・スカイフェはイギリス要員に資金を流し、クリントン大統領を大統領職から追い出そうとしている。最近のイスラエル報道機関によって、メロン・スカイフェが、イスラエル右翼のシンクタンク「戦略・政治先進研究所」(IASPS)に資金を流していたことが明らかにされた。

 IASPSは、エルサレム、ワシントンに本部を置き、イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフと、アメリカ下院議長ニュート・ギングリッチ、そしてキリスト教右派とを結び付ける働きをしている。

 98年6月3日のハーレツ紙によれば、IASPSに最も資金を流しているのは「サラ・スカイフェ基金」である。この事実は、ギングリッチが最近行ったイスラエル訪問を調査した結果明らかになった。

 国際報道機関ではあまり大きく報道されていないが、ギングリッチ訪問中、イスラエル議会(クネセト)で行われる予定だったセミナーが中止された。このセミナーは弾道ミサイル防御システムについてのセミナーで、ギングリッチはゲスト・スピーカーとして出席する手筈であった。

 中止理由は、主催者ロバート・ローエンバーク(IASPS所長)にあった。彼は昨年、ある記事を書き、その中でオスロ合意の立案者でイスラエル元首相であるシモン・ペレスについて、現代のルドルフ・ケストナーと主張したのである(ケストナーはハンガリー人で、ナチスのユダヤ人殺害に手を貸した)。

 ローエンバークはこの記事で、1995年に右翼狂信家に暗殺されたイツハク・ラビン首相への批判も行っている。彼はラビン首相について、和平合意を押し付けるために「警察国家の手法」を取ったと述べている。

 スカイフェの関与は何も驚くべきことではない。なぜなら、IASPSを詳細に調べれば、クリントン大統領を攻撃している組織、ラビン首相を暗殺した組織が同一であることが分かるからである。この組織はネタニヤフという操り人形を使って、イスラエルを中東戦争の道へと向かわせている。

●中東和平をひっくり返す

 「新しい転換:領土安全に関する新しい戦略」という政策案がある。この政策案はIASPSによって提出され、ネタニヤフが首相就任後初めて渡米する直前に発表された。

 この政策案によれば、オスロ合意で約束された地域平和・地域経済は反故にされるべきである。その代わり、伝統的な「権力バランス政策」を採用すべきである。なおかつ「ヨルダンはパレスチナ」であり、アメリカは最終的にはシリア・イラク・イランとの戦争に備え、準備すべきである、という。

 この政策案を書いたのは、レーガン政権下で国防省官僚を務めたリチャード・パールである。彼はブナイブリスの「ユダヤ名誉棄損防止連盟」(ADL)と長年のつながりを持ち、イスラエル・タカ派のアリエル・シャロンとも人脈を持っている。シャロンは現在、ネタニヤフ政権の国家基盤相である。

 パールは同時に「ユダヤ国家安全保障研究所」のメンバーでもある。この研究所はジョナサン・ポラードと関係を持っており、ポラードはイスラエル・スパイ容疑でアメリカで終身刑に服役している。ポラードはソ連に関するアメリカ機密をイスラエルに流したとされており、それによってソ連圏でアメリカ官僚が数名死亡したのである。パール自身、イスラエルに機密を流した容疑で取り調べを受けた経験を持っている。

 今回のISPASセミナーは中止されたが、ギングリッチがIASPSでゲスト・スピーカーとなるのは、今回が初めてではなかった。

 彼はIASPSとは長い関係を持っている。ギングリッチの妻はISPASに多額の資金を寄付している。ギングリッチは、IASPSの唱える過激な自由市場経済政策に魅力を感じている。しかし、それ以上に彼は、IASPSに資金提供を行っている裕福なビジネスマン、つまり「金持ちクラブ」に引き付けられている。スカイフェだけでなく、そうした金持ち連中はADLとも関係を持っている場合が多いのである。

●ローエンバークの極論

 ハーレツ紙によれば、IASPS所長ローエンバークは、世俗ユダヤ家庭の出身で、非ユダヤ女性と結婚した。彼は「自然と一体になるべく」バーモントで暮らしたこともあった。そして1960年代末、彼は「自らのユダヤ性を再発見し、正統ユダヤへの長い旅が始まった」のである。

 ローエンバークは、1984年にイスラエルに移住し、エルサレムで経済研究所を設立しようとした。「イスラエル、あるいは経済について何一つ知識がなかった」にもかかわらずである。当時の彼の同僚は、ハーレツ紙に次のように語った。 「私が彼の研究所を離れたのは、彼には明らかに隠された意図があり、イスラエルの政策に影響を与えようとして、メシアのような言葉遣いをしていたからです。そして彼の考え方は極端でした。」

 ローエンバークは、1970年代、80年代にイスラエルに移住した過激な「宗教シオニスト」の一人だった。彼らはイスラエルが民族政治国家であることには満足せず、「大イスラエル」を建国しようとしていた。それは祭政一致国家で、その国境は1948年のイスラエル国境を遥かに超え、西岸・ゴラン高原はおろか、ヨルダン・シリア・レバノン・エジプトの領土深くにまで広がっていたのである。彼らはアメリカの右翼キリスト教原理主義者や共和党右派とも連携した。

 IASPSは過激な自由市場政策を掲げた。彼らは規制緩和・自由化・自由市場を唱えながら、統制的イスラエル経済を変え、よりグローバルな自由市場経済を目指した。その目的はイスラエルを大きな国際金融センターにすることであり、そうなればイスラエルはあらゆる金融投機、ロンダリングの場所となる予定だった。

 1994年、IASPSは議員を通じてイスラエル議会に法案を提出し、イスラエルを自由貿易ゾーンにする提案を行った。しかし、この法案は否決された。なぜなら、この法案の真の目的が、規制を受けない金融センター創設にあることが明らかとなったからである。イスラエルが国際麻薬組織のロンダリング・センターになるとの恐れが広がったのである。

●ネタニヤフの驚くべき経済政策

 ネタニヤフの主要支持母体は、宗教政党や宗教シオニストである。しかし、ネタニヤフ自身は「宗教家」ではない。彼はヤボティンスキーの流れを汲むシオニスト運動の家系出身で、狂信的イギリス要員である。

 それゆえ、彼は過激な自由市場政策を信奉しており、主にこの政策を通じて、民族国家イスラエルの政治・経済機関を粉砕しようと考えている。彼はベニート・ムッソリーニの黒シャツ隊さながら、宗教右翼を各地に派遣している。それゆえ、ネタニヤフの首相就任後、イスラエルでこれまで以上にロシア・マフィアの活動が活発となったのも不思議ではない。

 首相就任後、ネタニヤフがまず行ったことは、国営産業の民営化手続き変更であった。これにより、彼の政権はいかなる産業でも民営化する権力を手中にした。それまでのイスラエルでは法律により、基幹産業については外人投資家の参入を規制する措置が取られていた。それゆえ、ネタニヤフの政策は、特に銀行部門に大きな影響を与えた。

 例えば、労働党母体の組合連合によって運営されていたハポアリン銀行が、テッド・アリソンに買収された。アリソンはネタニヤフの選挙活動への主要資金提供者である。アリソンは「カーニバル・クルーズ・ラインズ」という世界最大のクルーザー会社を所有しており、その船は海に浮かぶカジノである。

 同じく、ネタニヤフを財政支援している機関として、サフラ銀行グループがある。このグループは国際業務についてロンダリングの取り調べを受けたこともある。ネタニヤフ就任後、サフラ・グループはイスラエル・ディスカウント銀行に資本参加する許可を得た。しかし、労働党政権下では、サフラ・グループはイスラエルの銀行に資本参加することを許されていなかったのである。それは、同グループが以前、イスラエルの銀行を買収した際、違法行為の嫌疑があったためである。

 ネタニヤフ支援のネットワークには、アメリカの政治キャンペーン専門家、アーサー・フィンケルスタインもいる。彼はジェシー・ヘルムズ上院議員やギングリッチ下院議長ら共和党右派と人脈を持っている。

 6月4日のハーレツ紙によれば、和平交渉に関してクリントン政権に強情な態度を取るようネタニヤフをたきつけたのは、このフィンケルスタインである。フィンケルスタインは、いわゆる「和平安全委員会」の創設者で、この委員会には、共和党右派の議員、例えばルディ・ボシュウィッツ元上院議員、ジム・サクストンらが名を連ねている。この委員会は、ネタニヤフがクリントン大統領と戦うにあたり、議会から支持を得られるようロビー活動を行っているのである。

●アメリカのユダヤ共同体の不安

 ハーレツ紙によれば、ネタニヤフとアメリカ共和党右派との馴れ合い関係によって、アメリカのユダヤ共同体には不安が広がっているという。つまり、「イスラエル組織は、カモフラージュされた共和党組織である」ことが明らかになったのである。イスラエル組織は、アメリカ法に違反している可能性もあるとして、アメリカ検察庁も注目を始めている。

 最後に、ハーレツ紙の報道からお届けしよう。

 フィンケルスタインが、次のアメリカ大統領選挙で支援しそうな人物は、テキサス州知事ジョージ・ブッシュである。
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